無国籍ネットワーク代表 陳天璽の著書『無国籍』の中国語訳が出版されました

無国籍中国語版

無国籍ネットワーク代表 陳天璽の著書「無国籍」が馮秋玉氏によって中国語に翻訳され、台湾の八旗文化から出版されました。 これを記念して、出版発表会や座談会等が7月末8月初旬に誠品信義書店などで盛大に行われ、中廣ラジオ放送、中國時報、風傳媒などからも取材を受けました。
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『無国籍』は、日本語で2005年に新潮社から出版され、2011年には文庫本にもなり、今も読み継がれています。台湾ではビザがなければ入れないといわれ、日本では再入国許可書の期限が切れていたことを失念していたために入国できないといわれ、途方に暮れた陳自身の経験が冒頭に語られています。海外旅行で出入国審査を受けたことのある人なら、誰でも、自分がそうなったらと具体的に想像できるような状況を描くことにより、多くの人が無国籍について身近に感じ、関心を持つきっかけになりました。

 

中国語版が出版されることになったのは、この本を読んで感銘を受けた読者の一人、台湾人の陳思宇氏(台湾大学歴史学博士・内容力運営企画長)の努力によるものです。無国籍者の存在や気持ちを知ってほしいという陳天璽の気持ちが、陳思宇氏を動かし、翻訳により、世界中の膨大な中国語読者にも、無国籍について知ってもらえる機会が増えたのです。中国語版は、日本でも華都飯店で入手することができます。

 

この本には、何故両親が無国籍になることを選ばざるを得なかったのかという歴史的な背景、中華街で育ち、アメリカに留学し、研究者として就職し、日本へ帰化する間に経験した無国籍であったために生じた出来事、更に、調査で出会った様々な無国籍の人々についても生き生きと描かれています。国が帰属やアイデンティティを決定し、何々人と人々を分類することを当然とする国民国家体制の中で、何人とも認められないことに寄る辺のなさを感じ、私は何人かという問いに悩む無国籍者の気持ちが語られます。その気持ちは、理由は全く異なっても、本当の自分は誰なのかという疑問を感じたことのある多くの人にとって、どこか共感できる面もあります。この本は、アイデンティティは一元的なものではないことに気づき、家族や周囲の人たちに囲まれ、愛着のある場所で、自分自身として生きることに自信を得ていく、一人の若い女性の成長の物語としても読むことができます。

 

「自分のことを書くなんて、本当は嫌だったけれど、皆に無国籍を知ってもらえてよかった」と語る著者による、台湾読者の反応、10年間の変化等についてのトークイベントを開催する予定です。予定が決まり次第ご案内いたします。

 

(2016年8月9日 三谷純子 無国籍ネットワーク理事)

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